Physics Lab.2006 代表挨拶

今年は、1965年にノーベル物理学賞を取った朝永振一郎先生の生誕100周年に当たります。

朝永先生の著作に書いてあったのですが、ノーベル物理学賞のメダルの裏には、女神の覆いかぶさったベールを持ち上げている女性が描かれています。これは、自然の法則を垣間見ようとする物理学者をあらわしているようです。

物理学は一面では常識的で身近なものです。それは、現象を観察し、一般化し、他のことにも当てはめてみるということです。これは他の自然科学の分野にもあてはまることで、もっと一般には、血液型による性格診断も似たようなものです。

一方、非日常的な面も持ちます。日常にはあまりに多くの現象があふれすぎていて、複雑さというベールに覆われており、法則はなかなか見えてきません。そのため、真空にしたり、低温にしたりするなどして、非日常的なレベルにまで状況を単純化させます。逆に、それらから得られた単純な法則から、予期しなかった豊かな内容が予測されます。

このような物理学は、知れば知るほど疑問がわいてきて、楽しくてしょうがありません。

私達は、この面白さを普段物理に馴染みのない方にも知っていただくと同時に、自分たちの好奇心をも満たすような課題に半年間取り組んできました。

具体的な企画内容としては、以下のようなものとなっています。

  1. 独楽班:独楽関連おもちゃの解析と展示、コンピュータによるシミュレーション、ジャイロスコープの実験を行う。
  2. 物性物理班:とても狭い領域に電流を流し、量子論的な効果を測る実験を行う。また、液体窒素にヘリウムガスを吹き込んでなぜか沸騰がおさまることを見てみる。
  3. パターン認識班:統計力学の模型であるイジングモデルを利用して画像認識をおこなうシミュレーション。
  4. 宇宙物理班:一般相対論の理論。Kerr Black Hole解のシミュレーションを行う。
  5. 大域結合カオス班:振り子をたくさん並べて、それらを弱く結合すると、特徴的なおもしろい動きをすることを確認する。
  6. 神経インターフェイス班:腕の筋肉に流れる電気の電位をみる実験。

これらの企画内容を実現するにあたっては、物理学教室はもちろんのこと、理学部、工学部、企業にまでおよぶ、多くの方にお世話になっています。飛び込みで協力を頼みに行く私達を、快く迎えてくださった皆様に深く御礼を申し上げたいと思います。また、当日にお忙しい中、足を運んでくださった来場者の皆様方に、重ねてお礼の意を申し上げます。

2006年度東京大学物理学科五月祭”Physics Lab. 2006”代表 佐々木寿彦

トップページに戻る